年次有給休暇の付与日数、条件、パートタイム労働者への適用方法
【年次有給休暇取得の重要性と現状】
近年、働き方改革が進められる中で、労働者のワークライフバランスの向上が求められています。その中でも、年次有給休暇の適切な付与と取得は、労働者の健康維持や生産性向上に直結する重要な要素です。しかし、日本の年次有給休暇取得率は依然として低く、企業の経営者や人事担当者には、法令に基づいた適切な対応が求められています。
【年次有給休暇の基本:付与日数と条件】
労働基準法第39条に基づき、労働者が以下の条件を満たした場合、年次有給休暇が付与されます。
1. 継続勤務期間:雇入れ日から6か月間継続して勤務していること。
2. 出勤率:その6か月間の全労働日の8割以上出勤していること
これらの条件を満たした労働者には、初年度に10日の有給休暇が付与され、
その後の継続勤務年数に応じて付与日数が増加します。
具体的な付与日数は以下の通りです。
なお、2019年の労働基準法改正により、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対して、使用者は毎年5日について時季を指定して取得させる義務があります
【パートタイム労働者への年次有給休暇の適用:比例付与の仕組み】
パートタイム労働者やアルバイトなど、所定労働日数や労働時間が正社員より少ない労働者についても、所定労働日数に応じた日数が付与されます。
(これを「比例付与」といいます)
比例付与の対象となる労働者:
・所定労働日数 週4日以下(または年間216日)以下
かつ
・所定労働時間 週30時間未満
具体的な比例付与の日数は以下の通りです。
例えば、週3日勤務のパートタイム労働者が6か月間継続勤務し、
所定労働日の8割以上出勤した場合、5日の年次有給休暇が付与されます。
週の所定労働日数の定めがないパートタイム労働者の場合は、労働契約書や勤務シフトから、1年間に予定される所定労働日数を確認します。
【「年5日有給取得義務」について】
2019年の労働基準法改正により、年10日以上年次有給休暇が付与される労働者に対して、事業主は毎年付与する年次有給休暇のうち5日について、時季を指定して取得させる義務が課せられています。
この義務を怠った場合は、事業主に対して『5日未取得の従業員1人あたり』30万円以下の罰金が科される可能性があります。
注意してほしいのは、比例付与となるパートタイム労働者に対しても5日取得義務がある点です。
例えば、週4日勤務の方は、勤続2.5年までは付与日数が10日に満たないため、5日取得義務の対象外ですが、勤続3.5年に達すると付与日数が10日となるため、5日取得義務の対象となります。同じ勤務条件の労働者であっても勤続年数で扱いが変わるのでご注意ください。
【「年次有給休暇管理簿」について】
「年5日有給取得義務」と同時に「年次有給休暇管理簿」の作成も義務となりました。
企業は年次有給休暇の取得状況について、従業員ごとの「管理簿」を作成することにより適切に管理し、
これを3年間保存する義務があります。
管理簿の必要記載事項は、「日数(付与・取得)」「取得した日付」「基準日(有給休暇を付与した日)」の3つです。